SSブログ

「規則破り」 [雑感]

「正しさよりも、明るく」という言葉を聞いたことがある。
「正しい」と思いこむことで、「正しくないもの」を徹底的に
攻撃する。
その対象は時に自分自身にも向けられる。

というようなことを
わかりやすく、しかも秘め事めいたエピソードをからめ
素晴らしいエッセイに仕立てた
吉村萬壱さんの「規則破り」という
日経新聞11月15日(日)の「文化」という欄である。
http://www.nikkei.com/article/DGKKZO94016350U5A111C1BC8000/
(上記は会員限定ページのようなのですが)
https://twitter.com/yoshimuramanman?lang=ja
ご本人のツイッターです。

私はこのエッセイを読んで
こころの奥底に仕舞っていたとあることを思い出した。

いまでは、とても高名な大先生なので名を伏すが
その先生が
昭和50年ころ開いた私塾に
少しだけ通っていたことがある。
そんなに長い期間ではなかったと記憶している。

EPSON037.jpg
剣道や合気道の教室ではないけれど
着物に袴、下駄を履いてバスに乗って
そこまで通った。

生徒はみな和服姿だったのだ。
今にして思えば
朴歯の(一本歯)下駄で通う先輩や
かわいい和服姿の女生徒もいたっけなあ。

写真の裏面には50.4.6 中一とある。

当時だって 中学生の私には この姿で街を歩き
バスに乗るのなんか恥ずかしくて恥ずかしくって。
気が変になりそうになったことを思い出す。

そんな塾では
「奥の細道」なんかを書写し
皆で朗読したり、座禅の真似をしてみたり
今思えば「寺子屋」のような勉強をした。

宿題があった。
書けなかった漢字をノート一面にびっしりと書いてゆく。
というものだ。
これは忘れるとどんどん溜まる。
溜まると「利子」が増える。
また、授業で書けない漢字が出る。
出るとそれが追加。
これは厳しい決まりだ。

増えると雪だるま式。

もうニッチもサッチもいかなくなる。

塾も行きたくない。先生は怖い。
少人数の同級生たちの風当たりも強い。

心は押しつぶされんばかりになってゆく。

そんなときだった
先生が「こっちに来なさい」
と言って
普段は絶対に入れない
先生の書斎だか、応接間に通された。

雷が落とされる!

そう思ったときに
先生は、自分で作った厳しい決まりを破ったのだった。

どういう風にしてくださったのか
いまはもう思い出せないが

単に「許される」というようなものではなかったはずだ。
断じて暴力沙汰でもない。

そしてそのあとで
同級生や諸先輩から
「えこひいき」だ。とはやされることもなかったと思う。

どんな風に私をさばき
指導したのか、今も思い出せないが

子供心に
西日射す、昔の「洋間」で
先生が注いでくれた視線が
暖かかったことを、強烈に思い出した。

そう
色々な人に 私は育てていただいたのだ。

思えば先生が私に接してくださったのは
現在の私よりも若かったはずだ。

いま
この年齢になって、人を育てることなどできないでいる自分を恥じる。








この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。