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弱い男の心の中で [雑感]

いやな感じ。だった。
氷雨降る日の夕方、駅の自販機で暖かいコーヒーを買おうと。
カップにドリップされるタイプだ。
これを飲んで温まりながら東京へ向かおう。
ボタンをおして約一分待つ。
ふと見ると、僕の押したのは「アイスコーヒーのビッグカップ」のボタン。
こいつがケチのつき始め、、。

いつもは乗らないグリーン車で戸塚駅を過ぎたころ
両手にこれ見よがしにタトウを入れた半袖の(寒いのに!)
若い男が息せき切って
普通車から移ってきた。
ちょうどいたグリーンアテンダント(女性乗務員)に
男「戸塚で降りるんだけど」
ア「もう戸塚は過ぎました」
男「どうすりゃいいの?」
ア「次の横浜で降りていただき、、、。」
と、男のスマホに着信。
「いま、戸塚を過ぎちゃって」「横浜で降りろっていわれてるっす」
「え?あ、はい?まだ電車の中っす。」「すんません」
でかい声で話し始めた。
ア「お客様、車内での通話はおやめください」
男「を?いま大事な仕事の電話してんの!」「緊急なの!」
男「てめ、俺のことなめてんの??」絡み始めた。
俺の席の真横で。
ア「なめていませんが、おやめいただかないと」

本を読んでいた。「博士の愛した数式」。
話に入り込んでいたのだが、もうだめだ。
本に落とした視線を動かさずに、二人の動向に巻き込まれた。

男が手を出したら止めよう。と心には決めた。
決めたが、男は雨のせいもあって
長傘の真ん中あたりを握っている。

あれを振り回されたら困ったことになるな。
しかし、ここは狭い車内。幸い客は少ないし
通路から席の間に押し倒せば時間が稼げる。
そう踏んだ。
格闘技はしたこともないので、頼みの綱は「体重」。
一瞬で男を掴まえ、身体を預けるようにして全体重をかければ
よほどの力持ちでなければ払いのけることは出来まい。

それには懐に飛び込むのを躊躇してはいけない、、。

イライラする男。
震えながら、気丈に対応するアテンダント。
本を握り締め、顔も上げられない自分、、、。
もし顔をあげ、男と目でもあったら
「おう?おっさん、なんだよ?」と始まるのは必至。

永遠とも思える時間が過ぎ去り
「ヨコハマー。横浜です。お出口右側です」
アナウンスとともに出口を目指す男。

出口から男が降り終える前に
アテンダントさん「お客様、お騒がせしました」って。
目もあわせられなかった、、、。

殺生なあ。電車が走り出してから言いに来てよう。

降りる駅でアテンダントさんと顔をあわせることが出来
「何のお力にもなれなくて」
「傘を持ってたから、こわかったですよ。僕も」
言葉を掛けることが出来て、少しだけ救われた。


博士の愛した数式 (新潮文庫)

博士の愛した数式 (新潮文庫)

  • 作者: 小川 洋子
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2005/11/26
  • メディア: 文庫



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