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「親父は好きじゃない」 [雑感]

その人は問わず語りに話し始めた。

「親父が危篤って電話がかかってきたんだ」

「えっ!じゃあ早くお見舞いに」と俺。

「いや」「いいんだ」
「もう齢だし、これまで何度も連絡があって」

「駆けつけたところで、本人意識ないし」

「あと数日か、数ヶ月かって言われて、もうどれくらいになるだろう」

「兄貴と弟いるしね」

「正直、親父のこと好きじゃないんだ」

「15歳のときに、東京へ出てきた」
「そそそ、高校入学と同時」
「でね、こっち来て会社に入って、その寮に住んで」
「夜学校に行かしてもらうの」

「全国から、そうだなあ?100人近く俺みたいな連中が集まってさ」
「何ヶ月かでごっそり辞めてさ」
「でもね」
「いまも何人か同期のヤツもいるよ。その会社に」

「すごい田舎でね」
「兄貴が両親と同居してんの」

「うん、母親は元気だよ」「齢とって、それなりだけどね」

「親父好きじゃない」「って言っても、15歳のころのことだけどさぁ」

「田舎へも10年くらいは行ってないなあ」

「やっぱ、好きになれないや」「おやじ」

「だから駆けつけるのは、どうかと思って」

それから、今の会社に入るきっかけをひととおり説明してくれた。
そして
<紆余曲折があって、その会社の代表者となるまで。>


それこそ波乱万丈の物語だ。

こここそ、書いておきたいところなのだが
あまりにも、個人情報満載なので Aさん。Bさんとか書いても
誰かわかっちゃいそうなので割愛する。

そして

そんな話をしている最中に
今度は携帯に訃報が届く。

「おふくろには会いに行くか。」
「親父は好きじゃないけど」

こないだ梅崎司の本を読んだばかりの俺。
梅崎選手は
親父さんが母親を激しいDVで傷つけるのに耐えかねて
いつかプロサッカー選手として身をたてる。と誓ったのだ。

15歳 サッカーで生きると誓った日

15歳 サッカーで生きると誓った日

  • 作者: 梅崎 司
  • 出版社/メーカー: 東邦出版
  • 発売日: 2017/12/20
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)



俺とあまり年齢の違わない
とある会社の社長さんは
いま、俺と似たような立場なのに
まったく違った道を歩んで来られたのだなあ。

と。感じ入ってしまった。

他人には入り込めない複雑な事情の入り混じった
「家族」それぞれの思い。

そんな「家族」が否応なく一同に会する場所。

それが「お弔い」なのだなあ。

なんども何度も「おやじ好きじゃない」
と言葉を発していられたけど

「なぜなんですか?」
とは、とうとう聞くことは出来なかった。。






春が来たみたいです。こちらに。
今日は風が強くて目がショボショボし始めました、、、。





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