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「漢」と書いて「おとこ」と読む [クルマ]

大藪春彦の話の続き。

忘れかけていたが、

もちろん、いまさら誰にも大藪の読書を勧めはしない。
当時最新のメカも今ではきっと「古典的な」ものに
なっていることだろう。
当時の最高峰レーシングカーなど
今のGTRなど相手にはひとたまりもないだろうから。

それにあまた出てくる
犯罪や悪事の手口も、張り巡らされたインターネットの情報網や
どこにでも普通にある防犯カメラの前では
笑止、噴飯モノの内容でしかないはずだから。

思い出したのは
そんなことではなく

「レース」「レーサー」には
「いつも死の影がつきまとい」「どこかに血の匂いがしていた」
というもの。

現実に毎年著名なレーサーが
何人も若くして落命していたのだ。

それで、大藪の物語には
暴力や犯罪の延長線上にモータースポーツを置き
男が、生身の体を張って一か八かの大勝負に出る。

勝利すれば富 名声 美女 その他すべてを手に出来るが
失敗は即「死」。
そんな場所でしか輝けない
ある種の不器用な男たちが次々と登場した。

そしてそうした男たちが
現実の世界にも少数ながら間違いなくいた。

いにしえにはそれを「侍・サムライ」といい
先の大戦では「兵隊さん」「兵士」
といった。

戦後、高度経済成長の世に生まれ
世に出るのが遅くて、臍をかむような
気持ちでいた、血気盛んな男たちが
こぞって大藪を支持した。

それは大衆娯楽文学だったかもしれないが
確実に「オトコ」の本能を刺激してきたのだ。

いま
モータースポーツは本当に安全になり
純粋に「スポーツ」として
また「テクノロジーの競争」として
子供と家族団らんをしながらでも
眺められるそんな「興業」になった。

良い時代なのだ。

昔はモータースポーツの雑誌を持っているだけでも
白眼視されたのだから。

その意味では「昔は良かった」
などとは言えない。

今のほうが数段いい。

しかし。だ。

安全になった、その見返りなのだろうか

廻りを見回してみても
「オトコ」「漢」がいなくなった。

そうそう思い出した。
富士の耐久レースだったか、片山義美さんが
ピットレーンで立っていたのを見たことがあった。
ヘルメットを被り
レーシングスーツに身を固め
腕を組んで自分のクルマのピットインを待っていたのだが、

「剥き身の日本刀だ」率直にそう思った。

オーラなどというような生易しいものではない、
触れることも出来ぬような、おそろしい妖気を感じたのだった。


今後はもう
そんな「漢」にはあえないだろうと思う。

一瞬でも本物に出会えた私はとてつもなく幸せものだ。

ちなみに
私のパソコンの辞書では
「おとこ」と打っても「漢」は出ず。
手っ取り早く出現させるには「痴漢」と打って
バックスペースキーで一文字消した。

なんだかなぁ。
そんなもんなんだなぁ。はぁ。

「好漢」はちなみに9個目で出ました。。。


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