さよなら おやじさん

ふつうにしゃべっているのに、いつも怒鳴り声にしか聞こえない人だった。
「おやじ」さんだった。
絶滅種
「地震・雷・火事・親父」の。

熱狂的なベルマーレサポーターだった。

あるとき
「ベルマーレの良い時も、悪い時も、全部ご存じなんですよねえ」
と水を向けたことがあった。
と
「あんたねえ！」「なんもわかっちゃいないんだよ！」
怒鳴られた。（本人は怒鳴っているつもりはないらしい）

「ベルマーレのサポーターを長年しているとだねえ」
「悪い時、悪い時、悪い時、でトキタマ、良い時、があるんだ」

「俺なんかなあ、でっかい旗をもってだなあ」
「得点したら振るんだけど、いつもムダな大荷物になるんだよ」

今年の「強いベルマーレ」を見せてあげたいなあ
と思っていた。

このところ、メインスタンドのど真ん中にいるはずの
おやじさんの姿がない。

その理由がわかった。

14連勝目の福岡戦には車イスで来ていたのだそうだ。
病院の外出許可をもらって。

グラウンドレベルで、監督や、選手たちに囲まれて撮影した写真が飾られていた。

その後病院に戻り
最後に見たのがアウェイの愛媛戦をテレビで。
15戦目の敗戦で、机を叩いて悔しがっていたそうだ。

「おやじ、、、。らしいや」
ご長男がしみじみと言っていた。


4年に一度のＷ杯も、楽しみにしていたことだろう。
でも、それらを見ることも叶わず
旅立って逝かれた。

さあ、ベルマーレよ
おやじさんのためにも、勝利を。

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