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ある失敗のはなし [雑感]

古いお寺があった。

このお寺は古くからの檀家も多く、名所旧跡ではないが
それなりに賑わってもいた。

古いので、本堂や庫裏は傾き、隙間風が吹き
床はギシギシと音を立てて、お世辞にも「名刹」ではなかった。

なかったが、ここには年老いた名物和尚がいて
来る人来る人に文字通り「説教」していた。

はじめて会う人にだって歯に衣着せずに
辛辣に小言を言ったし、あれがダメだ、これは直せ、と止まらない。

葬式だって、法事だって「省きに省いて今ではこんな体たらく!」
などと言いながらも世間の常識では「長くて、くどくてなんてヒドイ」と。
皆が言い立てる始末。

この老和尚が亡くなると
実子の副住職が住職となって、お寺を改革することになった。

この新しい住職は
どこからか資金調達する「ファンド」と開発する業者を連れてきた。

昔からの檀家から寄付などを募らずとも
大きな墓地と、納骨堂を再整備することで費用は捻出できる。
都心から高速道路を使えば1時間半ほどでアクセスできると
大々的にコマーシャルもして
お墓の希望者を募った。

なんとなれば「宗教不問ですよ。」とまで言って。

そしてしばらくして
古い本堂は建築雑誌に載るほどのコンクリート造りの3階建てに。
地下には大きなホールと地上には立派な伽藍だ。

庫裏も田舎では見たこともない立派なもの。

このほか、釣り鐘堂に、納骨堂、累代の住職の銅像
区画整理をした墓地は周辺の土地まで買収して
区画を大きく増やした。

大駐車場には、別の葬儀社が運営する斎場まで隣接している。

もう、昔の面影はない。一大レジャーランドのよう。

お墓の区画が埋まり、納骨堂の希望者が増えれば
それで採算に乗って万々歳。

のはずだった。

だが、である。
思ったように希望者が来ないのだ。
アクセスは良いかもしれないが
所詮田舎。景色が良いわけでも、名所が近いわけでもない。
費用も都心に近い同様施設より割り高。だからか?


最初は本堂が新しくなり、墓地がきれいになるといって
喜んでいた
古い檀家たちはこの結果に猛反発。

住職の住まいを兼ねた庫裏の豪華さも許せない。

そうなると、開発業者もファンドも
一斉に手のひらを反す、、、。

四面楚歌になってしまう住職。


そして、住職は体調を崩し、
ついには総本山から辞任を命じられてしまう。

と、ここまでで話は終わるのです。

あくまでこれは作り話。
フィクションですよ。

でもね。考えさせられます。こういうのはね。
建物建てる側ですから。

開発業者が悪いのでしょうか?
融資をしてくれたファンドが悪いのでしょうか?
うまい話に乗っちゃった住職が悪いのでしょうか?

それとも昔の古いままが良かったのでしょうか?
何も手を付けずに。

檀家さんたちに寄付を募って古い本堂を改修するべきだったかも
しれません。

正解はわかりません。

計画段階で
長老たちにケチョンケチョンに貶され
頓挫した計画もたくさん目にしますし。

今の日本、挑戦、チャレンジを許しませんよね。
傾向として。

そしてね。なにより失敗を許さない。

しくじった者に二度目のチャンスはない。

さて、どうすりゃ良かったのか、、。。


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コメント 1

pn

失敗しても良いと思うんだけどね。
by pn (2019-10-01 06:08) 

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